会長挨拶
胃外科・術後障害研究会 会長ご挨拶
この度の本研究会の会長就任に当たりまして、謹んでご挨拶を申し上げます。
まずは、昨年の東日本大震災で不幸にしてお亡くなりになられた皆様に改めて心よりご冥福をお祈り申し上げますと共に、いまだにご苦労されている被災者の皆様のご健勝と一日でも早い復旧、復興をお祈り申し上げます。
さて、迷切研究会に始まり胃外科研究会へと発展し、そして胃切除後障害研究会と一緒になって発足した胃外科・術後障害研究会は、今年の秋に第42回目の学術集会を迎えます。胃外科は消化器外科の基本であり、そのことが本研究会の根幹を成しており、長い歴史と輝かしい伝統を築き上げて来ました。そして、胃外科においては、手術そのものだけではなく、胃手術後のQOLを常に重要な課題として取り上げ、トータルとして患者のcureとcareを追究しており、他の消化器外科関連の研究会にない素晴らしい特色を有しております。
ところで、胃外科の歴史をひも解いてみると、胃癌に対する胃切除が初めて行われたのは1879年のPeanによるもので、翌年にはRydygierも胃切除を行いましたがいずれも良好な成績は得られませんでした。しかし、1881年にBillrothが胃癌に対する胃切除術に成功したことは胃外科医のみならず消化器外科医の常識ですが、翌年の1882年にRydygierは胃潰瘍の患者に対する胃切除に成功したことは余り知られていないと思います。いずれにしても、19世紀の終わりころに胃外科の歴史が始まり、今年で約130年となります。この間、H2ブロッカーやPPIの登場により消化性潰瘍に対する胃切除や迷切術は姿を消し、一方、早期胃癌に対するEMR/ESDや腹腔鏡補助下手術が進歩、発達し、ロボット手術まで登場し、胃外科は大きく変化をしてきました。しかしながら、まだまだ開腹・胃切除術は消化器外科の王道であり、また、胃切除後障害で悩んでいる患者は少なくありません。
実は、上記の歴史的事項は、胃外科のバイブルとも言える1997年に胃外科研究会編集により発刊された「胃外科」(医学書院)に記載されています。昨今では、手術手技を中心にした成書は数多く出版されていますが、胃の解剖、生理機能、診断、治療、切除標本の取り扱い、そして周術期と術後管理、術後障害と、胃に関するすべてをまとめた本はこの「胃外科」以外には見当たりません。一方、新しい胃から分泌されるグレリンの発見、胃癌とH. pylori菌感染、腹腔鏡補助下手術の進歩・発展など、胃外科をめぐる話題は数多く存在しています。従って、「胃外科(第2版)」の発刊が望まれるところです。
最後に、胃外科の今後について考えてみました。すなわち、胃外科の対象はどうなるのかです。前述のごとく消化性潰瘍に対する手術は今後もほとんどないと思われますが、胃癌についても内視鏡治療のさらなる拡大、H. pylori菌感染の減少などにより少なくなることが予想されます。その一方で、徐々に現実的になりつつありますが、社会生活のさらなる欧米化などに伴い肥満症が増加することは間違いありません。そこで、肥満の胃癌患者や噴門部癌の増加、さらには肥満症そのものに対する胃の手術、すなわち、バンディング術、バイパス手術、袖状切除術などが行われることが予想されます。そして、これらの新たな対象となる手術の周術期管理や術後障害も重要な課題になる可能性が大いにありと思われます。従って、胃外科・術後障害研究会の果たすべき役割は、まだまだ今後も重要です。以上、本研究会のさらなる発展のために微力ながら全力を尽くす所存ですが、会員の皆様のより一層のご支援をお願い致します。
平成24年春
胃外科・術後障害研究会
会長 上西 紀夫
